桂川・相模川流域シンポジウムー支流から考える流域治水ー

11月30日開催された桂川・相模川流域協議会主催のシンポジウムに参加し、熊本県球磨川における流域治水の取組について学習しました。流域治水とは、近年の気候変動がもたらす豪雨などの甚大な災害に対して新たに示された水害対策の考え方です。2020年7月に発生した豪雨により球磨川中流部では至る所で水害被害が発生し25人の方が亡くなりました。
「河川改修や国土改変により下流に流量が集中する国土になったのではないか?これを改善するためには流域からの流出を抑制する対策が重要なのでは」「国河川を流れる流量のほぼすべては、県河川の流量が集まったものと言ってい良い。国河川の洪水流量が増大したのは、県河川が流域からより多くの洪水を集め国河川に注入させたからだということになる。県河川がより多くの排水を受け入れるようになってその流量が上がり、それを処理するために国河川の基本高水流量の増大が起こってきていると見るべき」「河川改修すればするほど洪水流量が増大する」等の仮説や指摘に基づき、熊本県では、河川改修だけでなく、遊水池の活用や森林整備など、自然環境との共生を図りながら、流域全体の総合力で安全・安心を実現していく「緑の流域治水」の考え方を表明し取組を進めているとのことです。
小流域、コミュニティレベルで治水を進めることが自身のコミュニティの価値を高めるだけでなく、下流域のコミュニティの価値も高めるとの考えで、具体的な流出抑制技術として「地上に降った雨水を下水道に直接放流することなく一時的に貯留し、ゆっくりと地中に浸透させる植栽空間」である雨庭の整備や森林管理、川幅を一律に設定しない川づくりや、川の流量を低減させるためのしくみづくりなどの実践報告がありました。
この「雨庭」は、古くから庭園文化として日本の寺社等で作られてきたようですが、そのデザイン性と共に雨水流出抑制機能に注目した取組が東京や京都などの都市部においても進んでいるようです。
河川改修だけに依存しない治水対策の重要性を再認識しました。