介護保険制度の今後を考える

9月25日、介護の崩壊をさせない実行委員会主催の学習会に参加しました。
講師は市民福祉情報オフィス・ハスカップ主宰の小竹雅子さん。小竹さんは2000年の介護保険制度創設時から20年以上に渡り制度の動向に注視し、その問題や課題について発信してきた方です。25日の学習会では、スタートから20年経過した介護保険制度がどのように変節し、スタート時掲げられた「介護の社会化」から遠ざかっているかを、特に地域支援事業導入後の動向についてお話がありました。
地域支援事業は、本来給付事業として全国一律のサービスを保障していた介護保険制度に自治体の裁量による事業として2006年に導入されました。要支援認定者に対する予防給付の創設等を皮切りに2015年には地域包括ケアシステムの導入と共に総合事業として要支援者に対するへの訪問介護と通所介護を地域支援事業に移行、その後も総合事業の弾力化として要介護認定になっても「住民主体のサービス」なら継続して利用できるようにするなど間口を拡げ、結果として総合事業新設本来の目的である「費用の効率化」を達成すると共に「利用者の削減」にも大きな効果を上げている、と小竹さんは言及されていました。2024年度の介護報酬・基準の改定で「住民主体のサービス」だけでなく、民間会社が提供するサービスの継続利用も認めることになり、要介護1になっても総合事業サービスに留まる人を増やそうとしているとのことです。
2015年に要支援者への訪問介護と通所介護が地域支援事業に移行した結果、福祉系訪問介護サービス(給付)利用者の20年間の増加率が約1.5倍に留まっている一方、医療系の訪問型サービスである訪問看護は約3倍になっているとの数字も示されました。

2025年には団塊の世代全員が75歳以上となり、これまでサービス提供役を担う側だった世代が介護を必要とする側になります。様々な分野において人材不足が大きな問題となっている中、「介護の社会化」を謳って創設された介護保険制度を本来の制度に修正していくにはどうしたら良いか。複雑でわかりにくい介護保険制度ですが、あれもこれも放り込まれた地域支援事業のスリム化も含め、制度の動向に注視しながらその在り方を自分のこととして考えていくことが必要です。
「当事者として声を上げていくことが必要」との小竹さんの言葉が心に残りました。